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川をのぼるサケ

2008年 6月 4日   13時21分 | posted by 本部スタッフ

こんにちは!名古屋オフィスの鈴木です。

以前、新潟にボランティアに行った際に出会った方が、現在絵本作家をされているそうで、道徳の授業で使われた作品をご紹介します。

川をのぼるサケ 

  

「絵美、起きなさい。今日は試合のおうえんがあるでしょ。」 

母の声が聞こえますが、ベットから起き上がる気持ちには、なかなかなれませんでした。 

わたしはこの春からバスケットボールのクラブに入っています。今日のこの新人戦をめざして、暑い夏も休まずに練習を続けました。ところが、一週間前の登録メンバー発表のとき、わたしの名前はよばれませんでした。春からいっしょに練習してきた仲良しの友達が、みんな登録メンバーになってというのに・・・。 

しばらくたってやっと起き上がり、台所におりていくと、 

「絵美、サケがのぼってくるところだなあ。ちょうど雨上がりだし、いっしょに見に行ってこないか。まだ時間があるだろう。」 

と、父がにっこり笑いながら言いました。 

 あれは、去年の冬のことでした。 

 学校にサケのたまごがとどきました。四年生になってから。ずっと川のことを学習してきたわたしたちのクラスが世話をすることになりました。たまごの中をよく見ると、小さな目のようなものが動いています。そのうちにたまごがかえり、オレンジ色のふくろをぶらさげて泳ぐようになると、毎日観察するのが今まで以上に楽しくなってきました。しばらくすると、そのオレンジ色のふくろが小さくなり、今度はえさをたくさん食べ、元気よく動き回るようになりました。わたしたちは、えさ当番の日をわすれないようにカレンダーに印をつけ、世話を続けました。 

 五年生になった四月、放流の日がやってきました。 

「元気でいってらっしゃい。ちゃんと川のにおいを覚えて、帰ってくるんだよ。」 

と言いながら、一ぴきずつ川へ放流しました。 

  

 父の言葉を聞いて、放流した日のことを思い出したのです。それで、父の車に乗って、サケを放流した川が流れ込む海岸に向かいました。 

 よくつりをする父は、海を見て、 

「おお、たくさん来ているなあ。川をのぼるチャンスを待っているんだ。」 

と言いました。わたしは、なかなかチャンスを見つけられなくて、じっと目をこらして波間を見つめました。やっと、波の中にサケのかげを見つけることができるようになりました。サケは河口近くに何十ぴきもいました。 

  

 「ピッチャン。」 

 河口から少し川に入ったところにあるせきの近くで、サケがはねました。よく見ると数ひきのサケが、流れにさからって川をのぼろうとしていました。何度も何度ものぼろうとするのですが、そのたびに、岩をうちつけられたり、はさまれたりして苦しそうです。その中に、せびれのあたりがきずついているサケがいました。それでも、そのサケは、いっしょうけんめいに川をのぼろうとしていました。 

 しばらくして、大きなサケが一ぴき、せきをこえました。すると次々にほかのサケもせきをこえ始めました。しかし、きずついたサケは、なかなかこえることができません。

わたしは、いのるような気持ちでそのサケをおうえんしました。 

 川にかかった鉄橋を列車が通りすぎたしゅんかん、ついにそのサケもせきをこえ、いきおいよく上流に向かって泳ぎ始めました。 

 そのすがたを見送りながら、 

(わたしはなにをしているのだろう。

 そんな気持ちがわき上がってきました。 

「父さん、帰ろう。わたし、もう行かなくっちゃ。」 

 そのとき、あんなにもやもやしていた気持ちが、すっかり消えていることに気がつきました

Posted in 本部スタッフ |


 

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